01.retard/遅刻
約束の時間は、とっくに過ぎていた。
時計を見る。この時点で、すでにポルナレフは15分も遅刻していることになる。
目の前を通り過ぎて行く人々を眺めながら、回りを見渡す。 特徴的な彼の声も聞こえないし、立てられた銀の髪も見えない。
久しぶりに会おう、という話になったのは一週間ほど前。試験期間が始まったら会えないだろうから、と寂しそうな声音で言われれば断ることは出来なかった。
ただ、その誘いをかけてきたのは彼の方だった。留学生であるの試験は、僕よりも多い。
まず言語という壁があるから、よけいに時間がかかるし試験には熱が入るのも当然だ。
ぼうっと考え込んでいるうちに、さらに10分が過ぎた。ポルナレフにしては遅い。
時間にルーズなわけではないのだけど、彼はどうもトラブルに巻き込まれやすい体質をしている。おそらく、今もそうなんだろう。
喧嘩に巻き込まれることなんてザラだし、その辺にいる人に声をかけられてオロオロしている時もあった。
もともとが心優しいから捨て置けないという彼の性格も災いして、待ち合わせの時間にはゆったり着くようにしているがそれでもまだ来ない。
携帯電話に連絡がきているわけでもないし、騒がしい彼の声が聞こえてくるわけでもない。これは本格的に待たなくてはいけないかも、とマフラーを巻きなおした。
まわりを見渡せば、少し肌寒い季節に伴って密着度が上がったカップルが目に付く。無言で目をそらした。
多少なりとも、快く思えないのは仕方がないことだ。独り者じゃないものの、こう、人目につくところで密着することはできないからうらやましいのかもしれない。
そろそろ本格的に冬が始まる。そうすると、寒いといってこたつからでようとしないフランス人にみかんでも調達してやらねばならない。
少し風が出てきた。この時期の風は、やけに冷たい。心まで冷やしてくれそうだから、ポケットに入れた手をぎゅっと握りこんだ。
「っとォ、すまねぇ!」
人を押しのけて、くっつきすぎだからよーなんてぶつぶつ言いながら現れたのは、待ち望んだポルナレフ。
驚いてじっと視線を注げば、申し訳なさそうな顔をして頭をかいた。息切れしているところから、走ってきたことはわかる。
「花京院、悪ィ!遅刻した!」
「うん、君ってば最悪だね」
「あ、謝っただろ!そんなにサクっと最悪とかいうなよなぁー…」
鼻の頭を赤くして、ジャケットのすそを直す。今さっき、やっと出てきましたみたいにしか見えないが何かあったんだろう。
さみぃ、といいながら手をこする。やっぱり騒がしい。でも、その彼がまわりと違って明るく見えるから不思議だ。
「おごるから、機嫌なおせよ」
「当たり前だろ?」
苦笑する彼の後について歩く。さっきまでの冷え切った感じが、少し温まったような気がした。
時計を見る。この時点で、すでにポルナレフは15分も遅刻していることになる。
目の前を通り過ぎて行く人々を眺めながら、回りを見渡す。 特徴的な彼の声も聞こえないし、立てられた銀の髪も見えない。
久しぶりに会おう、という話になったのは一週間ほど前。試験期間が始まったら会えないだろうから、と寂しそうな声音で言われれば断ることは出来なかった。
ただ、その誘いをかけてきたのは彼の方だった。留学生であるの試験は、僕よりも多い。
まず言語という壁があるから、よけいに時間がかかるし試験には熱が入るのも当然だ。
ぼうっと考え込んでいるうちに、さらに10分が過ぎた。ポルナレフにしては遅い。
時間にルーズなわけではないのだけど、彼はどうもトラブルに巻き込まれやすい体質をしている。おそらく、今もそうなんだろう。
喧嘩に巻き込まれることなんてザラだし、その辺にいる人に声をかけられてオロオロしている時もあった。
もともとが心優しいから捨て置けないという彼の性格も災いして、待ち合わせの時間にはゆったり着くようにしているがそれでもまだ来ない。
携帯電話に連絡がきているわけでもないし、騒がしい彼の声が聞こえてくるわけでもない。これは本格的に待たなくてはいけないかも、とマフラーを巻きなおした。
まわりを見渡せば、少し肌寒い季節に伴って密着度が上がったカップルが目に付く。無言で目をそらした。
多少なりとも、快く思えないのは仕方がないことだ。独り者じゃないものの、こう、人目につくところで密着することはできないからうらやましいのかもしれない。
そろそろ本格的に冬が始まる。そうすると、寒いといってこたつからでようとしないフランス人にみかんでも調達してやらねばならない。
少し風が出てきた。この時期の風は、やけに冷たい。心まで冷やしてくれそうだから、ポケットに入れた手をぎゅっと握りこんだ。
「っとォ、すまねぇ!」
人を押しのけて、くっつきすぎだからよーなんてぶつぶつ言いながら現れたのは、待ち望んだポルナレフ。
驚いてじっと視線を注げば、申し訳なさそうな顔をして頭をかいた。息切れしているところから、走ってきたことはわかる。
「花京院、悪ィ!遅刻した!」
「うん、君ってば最悪だね」
「あ、謝っただろ!そんなにサクっと最悪とかいうなよなぁー…」
鼻の頭を赤くして、ジャケットのすそを直す。今さっき、やっと出てきましたみたいにしか見えないが何かあったんだろう。
さみぃ、といいながら手をこする。やっぱり騒がしい。でも、その彼がまわりと違って明るく見えるから不思議だ。
「おごるから、機嫌なおせよ」
「当たり前だろ?」
苦笑する彼の後について歩く。さっきまでの冷え切った感じが、少し温まったような気がした。
07/11/24
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