traviato
イタリアっていうのは、なかなかに面白い国だ。
街ひとつ丸ごと保護されていたりとか、そこらに明らかに一般人じゃない奴がまぎれていたりとか。
目つきが違う、一つ一つの動作が違う。それすらも隠しているやつがいるかもしれないがなんとなくわかる。
「君、もう時間がだいぶ遅いが帰らなくてもいいのかい」
後ろから声をかけられて、振り返る。わかりやすい制服に身を包んだ人物が一人。
思い切り眉間に皺を寄せて睨み付けると、帽子を外してにやりと笑う。この街の立派な警官。
「承太郎、今日の巡回俺で良かったな」
「うるせえよ、不良警官さま」
恩着せがましく言うから、皮肉たっぷりに返すと俺の肩をぽんぽんと叩く。こいつの名前はアバッキオ。
しばらく前に、日本人だからとかいう理由でいきがってる不良たちからカツアゲされそうになったのを見ていた警官だ。
正しく言えば、不良を返り討ちにして全員から治療費だのクリーニング代をもらったのを見ていたというところだろう。
「なかなかやるじゃねえか、お前」
「お前じゃねえ、立派な名前がある」
気が立っていたから、つい売り言葉に買い言葉で余計なことを言ってしまった。何も言わなければそうつっこまれなかっただろう。
しかしそれが相手の気を引いたらしく、つま先から帽子の先までじっと見つめられる。そんなに汚れちゃいないはずだ。まともに打ち込ませなかったから。
「ほー、俺はアバッキオ。まあ、見たとおり警官だ」
「……空条承太郎だ」
それからよく絡んでくる。不良警官、というのはどうにもこいつが警官以外に職を持っていそうだからだ。
それも表のじゃあなくて、表面には出ないような。カンが鋭いわけじゃないが、只者ではないだろうという確信がある。
ほかにも巡回―まあ簡単に言えば遅くに出歩いてる未成年を補導して歩くこと―で俺を見つけると一緒に休憩したり、サボってたりするのを見かけるから。
「未成年、タバコは良くねえな」
「お前にいわれたかねえ」
くわえていただけのタバコを持っていかれて、ポケットからくしゃくしゃの箱を取り出す。
ないと落ち着かないわけではないが、あったほうが気持ちが楽だ。口元が寂しいというか、それが中毒なんかではないと自分に言い聞かせる。
「一本くれ」
「……じゃあ、賄賂っつーことで」
く、とアバッキオが笑う。苦味のある笑顔だ。もって行かれたそれを取り返して、再びフィルターを軽く噛む。
「やっすい賄賂だな」
並んで地べたに座る。紫煙がのぼる。どちらともなく噴出して、ひそかに笑う。なんとなくその表情に陰が見えるのは気のせいだろう。
街ひとつ丸ごと保護されていたりとか、そこらに明らかに一般人じゃない奴がまぎれていたりとか。
目つきが違う、一つ一つの動作が違う。それすらも隠しているやつがいるかもしれないがなんとなくわかる。
「君、もう時間がだいぶ遅いが帰らなくてもいいのかい」
後ろから声をかけられて、振り返る。わかりやすい制服に身を包んだ人物が一人。
思い切り眉間に皺を寄せて睨み付けると、帽子を外してにやりと笑う。この街の立派な警官。
「承太郎、今日の巡回俺で良かったな」
「うるせえよ、不良警官さま」
恩着せがましく言うから、皮肉たっぷりに返すと俺の肩をぽんぽんと叩く。こいつの名前はアバッキオ。
しばらく前に、日本人だからとかいう理由でいきがってる不良たちからカツアゲされそうになったのを見ていた警官だ。
正しく言えば、不良を返り討ちにして全員から治療費だのクリーニング代をもらったのを見ていたというところだろう。
「なかなかやるじゃねえか、お前」
「お前じゃねえ、立派な名前がある」
気が立っていたから、つい売り言葉に買い言葉で余計なことを言ってしまった。何も言わなければそうつっこまれなかっただろう。
しかしそれが相手の気を引いたらしく、つま先から帽子の先までじっと見つめられる。そんなに汚れちゃいないはずだ。まともに打ち込ませなかったから。
「ほー、俺はアバッキオ。まあ、見たとおり警官だ」
「……空条承太郎だ」
それからよく絡んでくる。不良警官、というのはどうにもこいつが警官以外に職を持っていそうだからだ。
それも表のじゃあなくて、表面には出ないような。カンが鋭いわけじゃないが、只者ではないだろうという確信がある。
ほかにも巡回―まあ簡単に言えば遅くに出歩いてる未成年を補導して歩くこと―で俺を見つけると一緒に休憩したり、サボってたりするのを見かけるから。
「未成年、タバコは良くねえな」
「お前にいわれたかねえ」
くわえていただけのタバコを持っていかれて、ポケットからくしゃくしゃの箱を取り出す。
ないと落ち着かないわけではないが、あったほうが気持ちが楽だ。口元が寂しいというか、それが中毒なんかではないと自分に言い聞かせる。
「一本くれ」
「……じゃあ、賄賂っつーことで」
く、とアバッキオが笑う。苦味のある笑顔だ。もって行かれたそれを取り返して、再びフィルターを軽く噛む。
「やっすい賄賂だな」
並んで地べたに座る。紫煙がのぼる。どちらともなく噴出して、ひそかに笑う。なんとなくその表情に陰が見えるのは気のせいだろう。
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タイトルの「traviato」は、イタリア語で「不良少年」という意味…らしいです。
翻訳エンジンで調べたのでちょっと自信はないのですがこの二人には似合うかなと。
7000HITリクエストで書かせていただきました!リクエストしてくださったやまさん、ありがとうございました!
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