くちばしにチェリー

 
ポルナレフは明るくて憎めなくていい人だ。それはわかってる。その背後につらい過去があったこともわかっている。
忘れてるんじゃあないのか、と問い詰めたいくらいそれを感じさせない。だからつい遊んでしまう。
「ポールーナーレーフ…」
びく、と体を大げさに震わせてそろそろとドアノブに手をかける。そうやって逃げるってことはわかっててやっただろう。
「今出たらエメラルドスプラッシュをくらわすぞ」
「な、何のことかなぁ〜俺にはさっぱりわっかんねえな!」
青ざめてるのにそんなふうに抵抗したってしょうがないじゃないか。落ち着けよポルナレフ。
僕の大事なチェリーを食べたのは君だってことはとっくに承知だ。丁寧に種をくるんで捨ててあるけれど。
「知ってただろう僕がチェリーを好きなことは」
「だ、だってお前っああいう風においてあったらルームサービスかと思うだろ!」
「尚更なんで食べたか理解できないよポルナレフ」
じりじりと距離をつめるとドアを背にポルナレフはぷるぷると震えている。いじめてるつもりはないんだけど。
いじめてるというよりかは、食べ物の恨みは特別恐ろしいって実感して欲しいだけであって。それってつまりいじめかな。
「すまんっ!もうしない、つーか今からパシってくるから!」
「そういう問題じゃないだろう、ほら言わないといけないことがあるし」
ぐっと押し黙り、ポルナレフは視線をさまよわせる。僕は完全にポルナレフの前に立ってこれ見よがしに微笑んでみせる。
ぺたりと座り込んでしまっているポルナレフに視線を合わせるためにしゃがみこみ、じっと見つめる。
「それともなにかい、ポルナレフは僕にかまってほしくてそんなことしたのかな?」
「ごめんなさいもうしません」
相当僕の笑顔が威圧的らしくポルナレフは降参、とばかりに両手を挙げながらすばやく答える。
「そっかー構って欲しいのか」
「言ってねえ、言ってねえよそんなことは」
あげられていた両手を握り、今度は優しく見えるように微笑む。そうするとほっとしたらしくポルナレフは肩を落とす。
これくらいで勘弁してあげるわけないじゃあないか。右手の手のひらに軽く唇を落とす。ぽかんと口を開けたポルナレフの視線が痛い。
「チェリーのことはもういいよ」
「…じゃ、じゃあ離してくださいませんか花京院くん」
「かわりに君で払ってもらおうと思うんだ」
真顔で返すと、さあっと血の気の引く音が僕にも聞こえた気がした。さあ、いつ冗談だと言ってあげようか。
それともこのまま一緒に遊ぼうか。口に出さずにただ微笑んでおくことにした。
 

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花京院はポルナレフで遊ぶのが大好きです。いきいきしてる花京院は楽しそうですよね!
7000HITリクエストで書かせていただきました!リクエストありがとうございました!!