The beginning of our Love.
僕と承太郎は、いたって普通の友人だ。
今、彼の母を助けるためにエジプトを旅しているということや、スタンドを使えるということを除けば知り合っていたかどうかはわからないけど。
とにかく今縁があって彼といっしょにいることを許されている。自然であるはずなのに、なぜか許されていると思ってしまう。
それは多分50日間という制限のようなものと、生きて帰れるという保障が無いからだと僕は考えている。
短い期間であるのに濃縮された時間をすごしているおかげで、誰よりも仲が良いと自負している。むしろ、自慢したいくらいに。
「承太郎」
ん、と顔を上げて続く言葉を待つ。それになんでもないと返すとじっと視線をよこしただけで、機嫌を損ねたりしない。
時間は夜中、もうそろそろ寝ないと明日の出発に響く。なのに僕と承太郎はいまだに眠れずにいた。
心臓が少しうるさい。普通の友人のはず、だったのに。最近の僕はといえば少しおかしいのだ。初めて親友が出来たからって浮かれすぎなんだ。
承太郎とポルナレフが楽しそうに話してるのを見るとどうしても割り込んでいってしまうし、承太郎が笑うとものすごくうれしい。滅多に無いけど。
まるで初恋みたいだなあなんて考えたのが運のつき。本当に承太郎に恋してるみたいで、まさかまさかと冷や汗ものだ。
「花京院」
「な、なんだい!承太郎っ!」
「…何、さっきから一人百面相してんだよ」
くつくつと笑いを噛み殺しながら、承太郎は目を細める。その顔もまた、きれいでどきりと心臓が跳ねる。
「ちょっと、思い出し笑いを…」
「どこがだ、青くなったり赤くなったり忙しいな」
苦しい言い訳が余計ツボに入ったらしく、帽子を取って口元を隠したまま承太郎は肩を震わせる。そんなに笑わなくたって良いじゃないか。
じりじりと承太郎に近寄って、そうっと帽子に手を伸ばす。気づいた様子はない、そんなに面白いか!ってくらいまだ笑っている。
震える承太郎の手から帽子を奪い、彼の後ろに広がる白いシーツへぽいと投げる。承太郎は口をぽかんと開けただけで、再び目じりを下げた。
「承太郎、そんなに笑わなくたっていいじゃないか…」
「だって、お前、ほんとに真っ赤だから余計…」
ダメだ、とばかりに承太郎は顔を伏せる。そんなに観察されていたのか、ぼーっとしてたからいけなかったのか。油断大敵だ。
「もう!そんなに僕のことが好きなの、承太郎!」
「は?」
「ずーっと見てるくらい好きなんでしょ、もーしょうがないな承太郎は」
指差し確認をすると、承太郎は小首をかしげてからくっとこみ上げた笑いをため息に変えたようだった。
反して僕は必死だ。心臓が早鐘のように鳴って、顔真っ赤ならもっと赤くなってももう大丈夫だろうなんて開き直って。
目の前にいるわけだから、ずいっと顔を近づけても承太郎は動じない。僕だけが一人でどきどきしているだけで。
「承太郎、ちょっと目瞑って」
「…なんでだよ」
「いいから」
仕方ないとばかりに目を瞑る承太郎のやさしさに深く感謝する。やさしさというより、あきれているのかもしれない。冷や汗が背中を伝った。
睫毛が長すぎる。きりりと引き締まった眉も、何もかも、かっこいいのに、それより前に綺麗で愛しいものだと認識してしまっている。
やるなら思い切ったほうがいい、花京院典明覚悟決めていくしかない。ぐっと拳を握ってみても目の前の承太郎にどうしても頬が緩んでしまう。
額にそっと唇を寄せて、すぐ離れる。触れたかどうかわからないくらい早く。やってしまったという後悔と、どうしようもなくはしゃいでいる二つの思いが交錯している。
承太郎は額に手を当てたまま、視線を僕からはずさない。
「あ、はは、期待した?」
「…っ、!なわけねーだろ!」
ぎらりとにらみつけてくる承太郎と目を合わせないようにしてちらりと様子を伺う。様子が、おかしい。
「…承太郎?」
「何だ!」
「顔、赤いよ」
くるりと背中を向けられた。でも、耳まで真っ赤に染まっている。あれ、これは、もしかして。いやもしかしなくても。
「承太郎、こっち向いておくれよ」
「…断る」
「頼むよ、承太郎…」
ベッドに顔を埋めて承太郎はまったく振り向いてくれようとはしない。でも、これは明らかにそういうことじゃないか。
しばらくの沈黙のあと、承太郎は本当にゆっくり(時間ごとゆっくり過ぎているかのように思うくらいの速度で)振り向いた。
とりあえず目の前に正座する。承太郎はベッドの側面に背中を預けて、床にぺたんと座ったままだ。
「もしかして、さっき本当に…その、期待してた?」
「何のことだ」
「…僕から、キスされるって」
爆発音がしそうなくらいの勢いで、承太郎は顔を赤く染めた。夢じゃないか。頬をつねってみる。痛い。ものすごく痛い。
「今からしてもいい?」
「勝手にしろっ!」
かわいいなあと緩む口元をなんとか引き締めて、まだどきどきとうるさい心臓の音も聞こえないふりをして、そうっと承太郎に口付ける。
わずかに震えていたような気がする。離れたときにうっすらと開いた承太郎の目と視線がかち合う。
「……俺に、何か言うことがあるだろ?花京院」
まだ赤く染まる頬を隠すように、膝を立てて顔を埋める承太郎はそう問いかける。大事なことだ。忘れちゃいけないこと。
「うん、ある」
ゆるゆると締まらない顔は仕方が無い。嬉しい、こんなにもあたたかで幸せな気持ちになるのは久しぶりだ。
「好きだよ、承太郎」
今、彼の母を助けるためにエジプトを旅しているということや、スタンドを使えるということを除けば知り合っていたかどうかはわからないけど。
とにかく今縁があって彼といっしょにいることを許されている。自然であるはずなのに、なぜか許されていると思ってしまう。
それは多分50日間という制限のようなものと、生きて帰れるという保障が無いからだと僕は考えている。
短い期間であるのに濃縮された時間をすごしているおかげで、誰よりも仲が良いと自負している。むしろ、自慢したいくらいに。
「承太郎」
ん、と顔を上げて続く言葉を待つ。それになんでもないと返すとじっと視線をよこしただけで、機嫌を損ねたりしない。
時間は夜中、もうそろそろ寝ないと明日の出発に響く。なのに僕と承太郎はいまだに眠れずにいた。
心臓が少しうるさい。普通の友人のはず、だったのに。最近の僕はといえば少しおかしいのだ。初めて親友が出来たからって浮かれすぎなんだ。
承太郎とポルナレフが楽しそうに話してるのを見るとどうしても割り込んでいってしまうし、承太郎が笑うとものすごくうれしい。滅多に無いけど。
まるで初恋みたいだなあなんて考えたのが運のつき。本当に承太郎に恋してるみたいで、まさかまさかと冷や汗ものだ。
「花京院」
「な、なんだい!承太郎っ!」
「…何、さっきから一人百面相してんだよ」
くつくつと笑いを噛み殺しながら、承太郎は目を細める。その顔もまた、きれいでどきりと心臓が跳ねる。
「ちょっと、思い出し笑いを…」
「どこがだ、青くなったり赤くなったり忙しいな」
苦しい言い訳が余計ツボに入ったらしく、帽子を取って口元を隠したまま承太郎は肩を震わせる。そんなに笑わなくたって良いじゃないか。
じりじりと承太郎に近寄って、そうっと帽子に手を伸ばす。気づいた様子はない、そんなに面白いか!ってくらいまだ笑っている。
震える承太郎の手から帽子を奪い、彼の後ろに広がる白いシーツへぽいと投げる。承太郎は口をぽかんと開けただけで、再び目じりを下げた。
「承太郎、そんなに笑わなくたっていいじゃないか…」
「だって、お前、ほんとに真っ赤だから余計…」
ダメだ、とばかりに承太郎は顔を伏せる。そんなに観察されていたのか、ぼーっとしてたからいけなかったのか。油断大敵だ。
「もう!そんなに僕のことが好きなの、承太郎!」
「は?」
「ずーっと見てるくらい好きなんでしょ、もーしょうがないな承太郎は」
指差し確認をすると、承太郎は小首をかしげてからくっとこみ上げた笑いをため息に変えたようだった。
反して僕は必死だ。心臓が早鐘のように鳴って、顔真っ赤ならもっと赤くなってももう大丈夫だろうなんて開き直って。
目の前にいるわけだから、ずいっと顔を近づけても承太郎は動じない。僕だけが一人でどきどきしているだけで。
「承太郎、ちょっと目瞑って」
「…なんでだよ」
「いいから」
仕方ないとばかりに目を瞑る承太郎のやさしさに深く感謝する。やさしさというより、あきれているのかもしれない。冷や汗が背中を伝った。
睫毛が長すぎる。きりりと引き締まった眉も、何もかも、かっこいいのに、それより前に綺麗で愛しいものだと認識してしまっている。
やるなら思い切ったほうがいい、花京院典明覚悟決めていくしかない。ぐっと拳を握ってみても目の前の承太郎にどうしても頬が緩んでしまう。
額にそっと唇を寄せて、すぐ離れる。触れたかどうかわからないくらい早く。やってしまったという後悔と、どうしようもなくはしゃいでいる二つの思いが交錯している。
承太郎は額に手を当てたまま、視線を僕からはずさない。
「あ、はは、期待した?」
「…っ、!なわけねーだろ!」
ぎらりとにらみつけてくる承太郎と目を合わせないようにしてちらりと様子を伺う。様子が、おかしい。
「…承太郎?」
「何だ!」
「顔、赤いよ」
くるりと背中を向けられた。でも、耳まで真っ赤に染まっている。あれ、これは、もしかして。いやもしかしなくても。
「承太郎、こっち向いておくれよ」
「…断る」
「頼むよ、承太郎…」
ベッドに顔を埋めて承太郎はまったく振り向いてくれようとはしない。でも、これは明らかにそういうことじゃないか。
しばらくの沈黙のあと、承太郎は本当にゆっくり(時間ごとゆっくり過ぎているかのように思うくらいの速度で)振り向いた。
とりあえず目の前に正座する。承太郎はベッドの側面に背中を預けて、床にぺたんと座ったままだ。
「もしかして、さっき本当に…その、期待してた?」
「何のことだ」
「…僕から、キスされるって」
爆発音がしそうなくらいの勢いで、承太郎は顔を赤く染めた。夢じゃないか。頬をつねってみる。痛い。ものすごく痛い。
「今からしてもいい?」
「勝手にしろっ!」
かわいいなあと緩む口元をなんとか引き締めて、まだどきどきとうるさい心臓の音も聞こえないふりをして、そうっと承太郎に口付ける。
わずかに震えていたような気がする。離れたときにうっすらと開いた承太郎の目と視線がかち合う。
「……俺に、何か言うことがあるだろ?花京院」
まだ赤く染まる頬を隠すように、膝を立てて顔を埋める承太郎はそう問いかける。大事なことだ。忘れちゃいけないこと。
「うん、ある」
ゆるゆると締まらない顔は仕方が無い。嬉しい、こんなにもあたたかで幸せな気持ちになるのは久しぶりだ。
「好きだよ、承太郎」
-----------------
わあー大分急いで書いたので、ちゃんと承太郎受けになってるかどうか…!
花京院ってきっと好きが変わっちゃうのが劇的だったと思うんです。
承太郎はそもそも、人間が嫌いじゃないのでこういうアタックに弱いと思うなあ。
まあ、人間たらしですけど(魅力たれながしという点で!)
こんな承太郎ですがどうぞ受け取ってくださいませ!
▲