Candy

 
※ギアッチョとミスタは同学年同クラスのお隣さん。
※国どこだよ、とか突っ込んじゃいけません。

俺の隣の席は、1時間目が始まるギリギリまで人が座らない。その持ち主が毎朝毎朝懲りずに遅刻してくるからだ。
朝礼にいない時点で遅刻扱い…のはずなのだが、もともとゆるい学校なので遅刻にカウントされない。
最初はイライラしてたがそれが当たり前のようだからか、慣れてしまった。いや、本当はダメだろっていうのは理解している。
さて、鐘がなるまであと時間が少ししかない。二分少々。で、今日の1時間目はポルナレフだから五分遅れてくるだろう。
あの先生は寒くなってくると、職員室から出る踏ん切りがつかないのか教室につくまで時間がかかる。
ちなみに夏は暑いから出てくるのに時間がかかる。一度壊れてものすごい薄着で来て主任のリゾットに怒られていたのはよく覚えている。
というか、思春期の男子が谷間に釘付けだったり、生足に釘付けだったりで授業にならなかったというほうが正しい。
廊下のほうからどたばたとやかましい音が聞こえてくる。そうすると、廊下側の一番前のやつがそっと扉を開ける。
数秒とたたぬ間に飛び込んでくるのが俺の隣の席で、無駄に明るくて、能天気なミスタ。本名?そこまで覚えてねえ。
「セーフ!セーフッ!すげーだろっ!」
12月なのにずいぶん暑そうだな、なんて思いながら自慢げに足を組むミスタを眺める。息切れがひどい。どこから走ってきたのやら。
「早起きすりゃいいだろうがバカ」
「バカってなんだよぉ!バカって言ったほうがバカなんだぞー!」
このやりとりも毎日毎日飽きもせずよく続くな、なんて逆に感心してきた。いっそなんで遅刻するのか気になる。
「俺はバカじゃねえ」
「いーやギアッチョのほうが」
「毎日学習しないで遅刻してくるお前にいわれたかねぇなあ?」
じりじりと睨み合うこと数秒。今度は勢いよく扉を開けてがっつり着込んだポルナレフが飛び込んでくる。毎度のこと、ドアの開閉が激しい。
「うー寒ぃっ!早く授業終わらせて帰るぞー!はいさっさとやろう!そんで終わろう!」
喧嘩を中断。ルーム長の号令にならって軽く頭を下げて教科書をやっと広げる。ミスタも同じように教科書を出そうと鞄の中身をひっくり返して、探す。
ちょっと様子がおかしい。教科書を一冊ずつ確認して重ねる。そのあと鞄をひっくり返す。鞄のそこまで穿り出そうとしたあたりで止めた。
「なにしてんだよッ、忘れたのか?」
「入れたのに無いっ!」
ぼそぼそと小声で交わして、ひっくり返した鞄の中身を回収。何でそんなに飴玉持ち歩いてんだと突っ込むのはやめる。両手いっぱいになるくらい鞄にいれるな。
「お前…あいつ教科書無いやつ集中砲火なの忘れてねーよな…」
「忘れるわけねーっ!うう…今日が14日だから!4がつくとろくなことがねーよう…」
忘れたやつはもちろん、周りのやつらも容赦なく指してくる。確かに教科書がないとなると暇だから、サボるのを防止するにはちょうどいいが迷惑極まりない。
「……取引だ、タダで貸してやるのは俺のキャラじゃねーからな」
「よくわかってる、その通り」
「お前が言うんじゃねえ!」
思わず大きくなった声をなんとか抑えつつ、がたがた机を寄せて真ん中に教科書を開く。これでとりあえず免れるだろう。
机の上にこんもり山になっている飴の中からライトブルーの包みを二、三個つまむ。
「これと交換な」
「飴ちゃんでいいの?」
拍子抜けしたらしいミスタがきょとんとしながら返す。別に、お前にそれ以上期待しちゃいねーよ。これ以上喋り続けるとポルナレフからチョークが飛びそうだ。
さすがにそれは避けたい。ノートの端にもう黙れって書いて前を向き直る。ちょっと見てない間に黒板が半分以上埋まっていると、焦る。
「…ギアッチョ、おっとこまえ〜!カッコイイー、どきどきしちゃう」
「棒読みだっつの!」
にらみをきかせたポルナレフがチョークを飛ばしてくるまであと数秒。
 

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ギアミスってとても気になります。なんとなく似てるからかもしれません。
ケンカップルの素質があるッ!