暖を取る。
冬は寒いのが当然だけど、今年はやたら寒い。昨年が暖冬だったからか余計に寒く感じる。
これに対応しきれないのがポルナレフで、故郷はこんなに寒くなかったと着膨れながら毎日自転車で登校している。
「あっ花京院!はよ!」
「お早うございます、…あれ?今日は膨れてない」
珍しくダウンコート一枚のポルナレフは、真っ赤に染まった手のひらに息をかけて何とか暖めようと必死だ。
でもそれって、逆に冷たくなりそうな気がして僕はやったことがない。一瞬は暖かいけど、すぐ冷たくなるじゃないか。
「手袋、飛んでったらしくてさー池ん中にポチャン!」
いつも使ってるから日干しをしてたら強い風が吹いてあっという間に、と大きく身振り手振りで教えてくれた。
「マフラーは?」
「同じ!」
可哀想な運命をたどったマフラーと手袋は部屋の中で干されているという。代えもなく、急げば何とかなるんじゃないかという淡い期待に身を寄せたが現実は本当につめたかった。
鼻の頭まで真っ赤で、いつもはセットしてある髪も心なしか冷えているように見える。
「職員室の暖房は変えられないから余計寒い…」
「暖房費払ってるのに可哀想だね」
確かに燃料費がかかるから、暖房を控えめにするのはわかる。でもそれを大体と、地球の環境のため云々というのはいかがなものかと思うのは秘密だ。
学ランのポケットに手を差し込んで、あさる。今朝も入れてきたからあるはずなんだけど、なかなかスムーズに出てこない。
「なに、なに?何か便利な道具でも出してくれる?」
「僕、狸じゃないから」
「あれはにゃんこよ、にゃんこ!」
国民的ロボットに対し、にゃんこというのもいかがなものか。確かにネコ型だから間違えてないのだけど、まあいちいち気にしちゃいけない。
ポケットを探ってやっと見つける。引っ張り出した手の上には、ほかほかとあったまるひつじのケース。
「なに、それ?」
「マフラーと手袋かわくまで貸してあげるよ、僕って優しいから」
頭の上にハテナを並べるポルナレフにそのケースを渡す。もこもこしてていかにも暖かそうなひつじのケースには、小さなカイロが入っている。
「あったけー!」
「ほら、カイロが入ってるんだよ…カイロ、知らない?」
ケースを開けて、カイロを取り出すとポルナレフはキラキラと瞳を輝かせる。初めて見たらしい。彼女の母国にカイロは無いのか。
左右にふって、裏返してみたり太陽に透かして見たりしたあと、それはもう極上の笑顔で振り向いた。
「ブラボー!これすっごい!どうなってんのっ!?」
「それは化学の先生に聞いて、僕もう行くからさ。はい、ケース」
「日本ってすっごいなぁ…」
ケースにカイロをしまって、両手で握りながらポルナレフはにこにこしている。これであの冷たそうな手はどうにかなるだろう。
さっさと教室に行って、今日当てられるところの予習をしないと。あの先生嬉々として指してくるからあんまり好きじゃないなあなんてぼんやり考える。
「あ、花京院!」
なに、と振り返る前に袖を引かれてよろめく。意外にちからもち、なんて考えてるあいだに何かが頬をかすめる。
「メルシー!じゃ、またあとで!」
片手を挙げて、軽やかに走りさるポルナレフを見送る。あれ、今のってもしかして。
外の空気に触れて寒い部分にくらべ、うっすらと残る熱。頬を指先で押さえて、なんとなく上ってきた熱が早く下がるように祈りながら校舎に向かって歩く。
これに対応しきれないのがポルナレフで、故郷はこんなに寒くなかったと着膨れながら毎日自転車で登校している。
「あっ花京院!はよ!」
「お早うございます、…あれ?今日は膨れてない」
珍しくダウンコート一枚のポルナレフは、真っ赤に染まった手のひらに息をかけて何とか暖めようと必死だ。
でもそれって、逆に冷たくなりそうな気がして僕はやったことがない。一瞬は暖かいけど、すぐ冷たくなるじゃないか。
「手袋、飛んでったらしくてさー池ん中にポチャン!」
いつも使ってるから日干しをしてたら強い風が吹いてあっという間に、と大きく身振り手振りで教えてくれた。
「マフラーは?」
「同じ!」
可哀想な運命をたどったマフラーと手袋は部屋の中で干されているという。代えもなく、急げば何とかなるんじゃないかという淡い期待に身を寄せたが現実は本当につめたかった。
鼻の頭まで真っ赤で、いつもはセットしてある髪も心なしか冷えているように見える。
「職員室の暖房は変えられないから余計寒い…」
「暖房費払ってるのに可哀想だね」
確かに燃料費がかかるから、暖房を控えめにするのはわかる。でもそれを大体と、地球の環境のため云々というのはいかがなものかと思うのは秘密だ。
学ランのポケットに手を差し込んで、あさる。今朝も入れてきたからあるはずなんだけど、なかなかスムーズに出てこない。
「なに、なに?何か便利な道具でも出してくれる?」
「僕、狸じゃないから」
「あれはにゃんこよ、にゃんこ!」
国民的ロボットに対し、にゃんこというのもいかがなものか。確かにネコ型だから間違えてないのだけど、まあいちいち気にしちゃいけない。
ポケットを探ってやっと見つける。引っ張り出した手の上には、ほかほかとあったまるひつじのケース。
「なに、それ?」
「マフラーと手袋かわくまで貸してあげるよ、僕って優しいから」
頭の上にハテナを並べるポルナレフにそのケースを渡す。もこもこしてていかにも暖かそうなひつじのケースには、小さなカイロが入っている。
「あったけー!」
「ほら、カイロが入ってるんだよ…カイロ、知らない?」
ケースを開けて、カイロを取り出すとポルナレフはキラキラと瞳を輝かせる。初めて見たらしい。彼女の母国にカイロは無いのか。
左右にふって、裏返してみたり太陽に透かして見たりしたあと、それはもう極上の笑顔で振り向いた。
「ブラボー!これすっごい!どうなってんのっ!?」
「それは化学の先生に聞いて、僕もう行くからさ。はい、ケース」
「日本ってすっごいなぁ…」
ケースにカイロをしまって、両手で握りながらポルナレフはにこにこしている。これであの冷たそうな手はどうにかなるだろう。
さっさと教室に行って、今日当てられるところの予習をしないと。あの先生嬉々として指してくるからあんまり好きじゃないなあなんてぼんやり考える。
「あ、花京院!」
なに、と振り返る前に袖を引かれてよろめく。意外にちからもち、なんて考えてるあいだに何かが頬をかすめる。
「メルシー!じゃ、またあとで!」
片手を挙げて、軽やかに走りさるポルナレフを見送る。あれ、今のってもしかして。
外の空気に触れて寒い部分にくらべ、うっすらと残る熱。頬を指先で押さえて、なんとなく上ってきた熱が早く下がるように祈りながら校舎に向かって歩く。
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やっちゃったー!カイロって、あんまり出回ってないらしいです!
感動だろうなあ〜こんな便利なものがあったら!というお話。
ポルナレフは寒さに弱そうなイメージがあります。たぶん、服のせい。
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