桜の頃には
※ナチュラルに兄貴生存注意。
杜王町は、東北にあるだけあってやはり寒い。3月になるというのにまだ肌寒い日があったりする。
しかも前日が暖かかったりするとその寒さもやはり倍以上に感じられるから困る。
ただの錯覚なのはわかっているが、なかなか環境に慣れるというのは難しい。
億泰は何てことなくすごしているが、寒い日はやっぱりくしゃみをしていたりだとか本人は気付いていないが調子が悪いことが多い。
だからお前は馬鹿なんだ、と言おうかいつも思うがあんまり言い過ぎてもよくない。黙ってしょうが湯を飲ますに留める。
「桜、なかなか咲かねぇなあ」
庭を眺めて億泰がぽつりとつぶやく。庭と言えるのかどうかわからないが、草は伸び放題でひっそりと生えた木は外から見れば不気味だ。
枝垂れ桜と言えばいいのか、とにかく一見して花が咲いていないと不気味に見えるものでも季節が近づけばつぼみが確認できる。
「寒いからな、東北だし」
「前ンとこはもう咲いてる時期だろ、こんなに違うんだなー」
風で枝がゆらゆら揺れるのが見て取れる。そのつぼみはまだ固く、開きそうにない。おそらく4月ごろだろう。
穴だらけだった家も真冬の寒さには耐えられずバッドカンパニーを総動員して補強したのも記憶に新しい。
今度は春が来る。そして夏が来る。それだけ考えれば頭は痛まないが、億泰と親父のことがある。
親父のことは、癪だが仗助とのいざこざで吹っ切れたような気がする。
今はスタンド能力を持った猫草が一緒なせいもあるのか、写真が戻ったからなのか、以前よりまともに話を聞くようになった。
言っていることはわからない。今までやったこともどうにもならないし、親子という関係にはおそらく俺は戻れない。
それでもなんとなく、一緒にいるのがつらいわけじゃあなくなった。それも進歩だろうと海洋学者が言っていた。
「兄貴ィ、桜咲いたらよ、親父と一緒に花見いこうぜ」
「……面倒くせえ」
渋い顔をしてみせると、少し笑って億泰は軽く手を振る。
「兄貴が思ってるよーなのじゃなくて、ただぶらっと歩くだけだって」
「親父とか」
「そう、いいじゃねーかよちょっとくらいゆっくりしたって!ばちあたんねえよ」
そのくらいじゃあ、と続けて億泰はまた庭を見る。一本しかない桜の木。億泰はうずうずしながら俺の答えを待っている。
「夜だけだぞ」
億泰から視線をはずし振り返る。親父と猫草が並んで、何か会話をしているように見えた。写真を見せびらかしながら。
もう少し暖かくなったら、もう少し気持ちが優しくなったら。すこしだけ、桜が咲くのを待とうという気持ちになった。
杜王町は、東北にあるだけあってやはり寒い。3月になるというのにまだ肌寒い日があったりする。
しかも前日が暖かかったりするとその寒さもやはり倍以上に感じられるから困る。
ただの錯覚なのはわかっているが、なかなか環境に慣れるというのは難しい。
億泰は何てことなくすごしているが、寒い日はやっぱりくしゃみをしていたりだとか本人は気付いていないが調子が悪いことが多い。
だからお前は馬鹿なんだ、と言おうかいつも思うがあんまり言い過ぎてもよくない。黙ってしょうが湯を飲ますに留める。
「桜、なかなか咲かねぇなあ」
庭を眺めて億泰がぽつりとつぶやく。庭と言えるのかどうかわからないが、草は伸び放題でひっそりと生えた木は外から見れば不気味だ。
枝垂れ桜と言えばいいのか、とにかく一見して花が咲いていないと不気味に見えるものでも季節が近づけばつぼみが確認できる。
「寒いからな、東北だし」
「前ンとこはもう咲いてる時期だろ、こんなに違うんだなー」
風で枝がゆらゆら揺れるのが見て取れる。そのつぼみはまだ固く、開きそうにない。おそらく4月ごろだろう。
穴だらけだった家も真冬の寒さには耐えられずバッドカンパニーを総動員して補強したのも記憶に新しい。
今度は春が来る。そして夏が来る。それだけ考えれば頭は痛まないが、億泰と親父のことがある。
親父のことは、癪だが仗助とのいざこざで吹っ切れたような気がする。
今はスタンド能力を持った猫草が一緒なせいもあるのか、写真が戻ったからなのか、以前よりまともに話を聞くようになった。
言っていることはわからない。今までやったこともどうにもならないし、親子という関係にはおそらく俺は戻れない。
それでもなんとなく、一緒にいるのがつらいわけじゃあなくなった。それも進歩だろうと海洋学者が言っていた。
「兄貴ィ、桜咲いたらよ、親父と一緒に花見いこうぜ」
「……面倒くせえ」
渋い顔をしてみせると、少し笑って億泰は軽く手を振る。
「兄貴が思ってるよーなのじゃなくて、ただぶらっと歩くだけだって」
「親父とか」
「そう、いいじゃねーかよちょっとくらいゆっくりしたって!ばちあたんねえよ」
そのくらいじゃあ、と続けて億泰はまた庭を見る。一本しかない桜の木。億泰はうずうずしながら俺の答えを待っている。
「夜だけだぞ」
億泰から視線をはずし振り返る。親父と猫草が並んで、何か会話をしているように見えた。写真を見せびらかしながら。
もう少し暖かくなったら、もう少し気持ちが優しくなったら。すこしだけ、桜が咲くのを待とうという気持ちになった。
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3月31日なのに雪が降りました。東北はまだ寒いです。
杜王町なら、みんな仲良しでいいとおもうんだ。猫草も一緒に花見して欲しいです。
7000HITリクエストで書かせていただきました!リクエストありがとうございました!!
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