ひざ枕願望
そういう関係になったのは、ただの偶然だった。偶然というよりは、きっかけがあっただけのように思う。
日本が恋しいとか、まともに出来た初めての友人だとか、そういうことも理由のうちに含まれる。
一番は、彼が僕の命の恩人で、そしてとてもうつくしい人だったから。
エジプトの気候は、正直いってまだ慣れない。強烈な日差しと、気温。それとこの制服。
肌が直に日に当たらないだけいい、とアヴドゥルは言っていたが如何せんこれは肌寒い時期に着る制服でもあった。
通気性なんてとくに考えられていないし、哀しいことに汗もまともに吸わない。
「…おい、顔色悪ぃぞ」
「ああ、ごめん…大丈夫だから、気にしないで」
気にかけてくれる彼もまた、同じように制服に身を包んでいるものの彼のそれはよく風を通す。特注らしい。
確かに、あんな制服は日本中どこを探したって彼しか身につけられないだろうなと思ったのは最近だ。
見上げる。太陽は依然としてさんさんと光を降らせる。まぶしい。
「今日もまた、いやみなくらいいい天気だね…」
「そういうふうになってるんだ」
その声音は、諦めにも似ていた。彼もまたこの温度には参っているんだろう。
ポルナレフは環境適応能力が高いらしく、もう気にしていないふうだった。ジョセフも同様。
「…あつい…」
道の端々においてある空樽に手をかけて、休む。自分の影が見える。今の時間は昼を回ったところ、一番日が高い時間だ。
「花京院、こんなあっちぃとこでとまんじゃねぇ」
ぐい、と肩を引かれる。よろけて、一歩下がる。見上げると、不機嫌そうな顔。見慣れた眉間の皺。
「さっさとホテルまでいっちまおうぜ…おい、花京院?」
その表情が、心配そうにゆがむ。返事をしよう、と思っていたのに視界がぐるりと天へ向かう。太陽の日差し。目を閉じる。
「花京院!」
ああ、君そんな声も出せるんだねなんて、口にしてしまっただろうか。もしそうしてしまったなら、彼はどう思うだろう。
ぱちりと目を開くと、頭上には承太郎の顔が見えた。彼はうつむいたまま、こくりこくりと舟をこいでいる。
あれ、と思って身体を起こそうとするがひどく重い。それに、ここはホテルなんかじゃなくて、木陰の中だ。
「じょ、う…」
「ん…」
起こすのもためらわれるような寝顔だけれど、すでに外は日が傾いている。いくら二人でいるといっても、帰りが遅ければ皆が心配するだろう。
「承太郎…おきて」
目を擦る。ゆっくり二回瞬きをして、それから僕の顔を見て口の端をわずかにあげた。
「意外とヤワなんだな」
「……慣れないだけだよ!」
「やれやれ、膝貸しててやったんだからちょっとは感謝しろよ」
足がしびれた、と彼は漏らす。やっと気付いた、この自分の頭の下、になっていたものは彼の膝…性格に言えば、腿の部分であったこと。
「えっ」
「帰るぞ」
早く立てとばかりに視線を送られる。けれど、そうだとわかってしまったら、恋人同士だものもう少しと思ってしまうじゃあないか。
じっとそのままでいると、それこそ呆れたようにため息をつかれる。彼の頬もわずかに赤い気がして。
「…承太郎、あともうちょっとだけ」
甘えるように呟くと、彼は一言やれやれだと呟いて帽子の鍔を下げた。彼なりの照れ隠しも、いとおしいと思えた。
日本が恋しいとか、まともに出来た初めての友人だとか、そういうことも理由のうちに含まれる。
一番は、彼が僕の命の恩人で、そしてとてもうつくしい人だったから。
エジプトの気候は、正直いってまだ慣れない。強烈な日差しと、気温。それとこの制服。
肌が直に日に当たらないだけいい、とアヴドゥルは言っていたが如何せんこれは肌寒い時期に着る制服でもあった。
通気性なんてとくに考えられていないし、哀しいことに汗もまともに吸わない。
「…おい、顔色悪ぃぞ」
「ああ、ごめん…大丈夫だから、気にしないで」
気にかけてくれる彼もまた、同じように制服に身を包んでいるものの彼のそれはよく風を通す。特注らしい。
確かに、あんな制服は日本中どこを探したって彼しか身につけられないだろうなと思ったのは最近だ。
見上げる。太陽は依然としてさんさんと光を降らせる。まぶしい。
「今日もまた、いやみなくらいいい天気だね…」
「そういうふうになってるんだ」
その声音は、諦めにも似ていた。彼もまたこの温度には参っているんだろう。
ポルナレフは環境適応能力が高いらしく、もう気にしていないふうだった。ジョセフも同様。
「…あつい…」
道の端々においてある空樽に手をかけて、休む。自分の影が見える。今の時間は昼を回ったところ、一番日が高い時間だ。
「花京院、こんなあっちぃとこでとまんじゃねぇ」
ぐい、と肩を引かれる。よろけて、一歩下がる。見上げると、不機嫌そうな顔。見慣れた眉間の皺。
「さっさとホテルまでいっちまおうぜ…おい、花京院?」
その表情が、心配そうにゆがむ。返事をしよう、と思っていたのに視界がぐるりと天へ向かう。太陽の日差し。目を閉じる。
「花京院!」
ああ、君そんな声も出せるんだねなんて、口にしてしまっただろうか。もしそうしてしまったなら、彼はどう思うだろう。
ぱちりと目を開くと、頭上には承太郎の顔が見えた。彼はうつむいたまま、こくりこくりと舟をこいでいる。
あれ、と思って身体を起こそうとするがひどく重い。それに、ここはホテルなんかじゃなくて、木陰の中だ。
「じょ、う…」
「ん…」
起こすのもためらわれるような寝顔だけれど、すでに外は日が傾いている。いくら二人でいるといっても、帰りが遅ければ皆が心配するだろう。
「承太郎…おきて」
目を擦る。ゆっくり二回瞬きをして、それから僕の顔を見て口の端をわずかにあげた。
「意外とヤワなんだな」
「……慣れないだけだよ!」
「やれやれ、膝貸しててやったんだからちょっとは感謝しろよ」
足がしびれた、と彼は漏らす。やっと気付いた、この自分の頭の下、になっていたものは彼の膝…性格に言えば、腿の部分であったこと。
「えっ」
「帰るぞ」
早く立てとばかりに視線を送られる。けれど、そうだとわかってしまったら、恋人同士だものもう少しと思ってしまうじゃあないか。
じっとそのままでいると、それこそ呆れたようにため息をつかれる。彼の頬もわずかに赤い気がして。
「…承太郎、あともうちょっとだけ」
甘えるように呟くと、彼は一言やれやれだと呟いて帽子の鍔を下げた。彼なりの照れ隠しも、いとおしいと思えた。
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これ、書いたの、10月だって。10月。初めて書いた花承。
はまりたてだよ…多分3部読んですぐです…ひいい。違う。
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