どうしよう、襲いたい

 
僕だって一応、男なんだぞ!とすごんでみたところで俺だってそうだとさらりと返事が返ってくるだけなのだろう。わかっているのに言わずにはいられない。
なんだって君はそんなに色気を垂れ流してるんだ、相手を夢中にさせてしまうんだ、僕以外に君に夢中な人を作らないで!僕だけにしてくれ、頼むから。
同じ男ならわかるだろ、って言ったらきっと軽蔑されてしまう。これは男だからとかそうじゃなくて、僕が君を独占したいだけだから。
「花京院、手…切れるぞ」
そんなに強く握るな、とそっと手をくるむ君の口元はちょっと笑っている。わかってやってるんだろう、知ってる、わかってる、わかってるんだ!
「承太郎」
切羽詰った声で名前を呼ぶとさもおかしそうに目を細める。ああ僕ってこんなに人に心を許していたかしら?と不思議な気持ちになる。
君だけだから、どこまで許したらいいのかわからない。君にならどこまでもと思うけど、踊らされるのは時に悔しい。
「…じょう、たろう」
「何だ?」
言わないとわからねえ、とぶっきらぼうに言う君の声は優しい。どんな小鳥のさえずりよりも。僕はあんまりそれを聞いたことがないけど。
「どうしたらいい?」
「…?」
予想していなかった言葉らしく、承太郎は目を丸くして少し首をかしげる。まだ僕の手をやんわりと掴んだままの承太郎の手を逆に掴む。
無理やり引き寄せて、耳元でささやく。そのまま君の身体にしみこんでいってくれはしないかと非現実的なことを考えながら。

「…襲ってもいいかい?」
 

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わあああー恥ずかしい男!花京院典明!ずあっ!