愛故に。は伝わらない

 
「鍵」
「いやだ」
手を伸ばして僕にねだる承太郎を眺めるのは少し気持ちがいい。なんとなく、僕のほうが優位な気がするから。少しでも彼より先に居たいのは僕の勝手だ。
彼が少し拗ねて、後ろを向く。じゃらじゃら重たい金属音がして、それはあんまりいい音ではないけど僕にとっては満足させる音だった。
「ごめんよ、足…擦れて痛いかい?」
「そういう気遣いはいらねえから、鍵」
じゃら、とまた音がして承太郎が足首をさする。足枷は精一杯の僕の愛情なんだけれど、それは伝わらない。多分一生かかっても理解してもらえない。
困った。けど、口元はどうにも笑ってしまっているから彼は少し怒ったようだった。こんな生活が始まってどれくらいだっけ?
一日?一週間?そう長くはないはずなのだけど、承太郎のことばっかり考えているから時間の感覚が無くなってきている気がする。
「承太郎」
名前を呼んでも目を合わせてくれない。ただ冷たく背中を向けたままだ。
その背中にそうっと触れて、肩に頭を預ける。何だって彼の身体はこうもあたたかな気持ちにさせてくれるんだろう?安心感だとか、そういうものとは少し違う。
「好きなんだよ」
だから何だとなじってくれるのを僕は待っている。これはお前の甘えだと鎖を引きちぎってくれるのを僕は待っている。
「…承太郎は、やさしい、ね」
僕の声のほうが、よっぽど泣きそうだった。
 

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メンタル弱い攻めが好きというだけの話です…!