庶民化計画

 
うっとおしいものは苦手だ。嫌いと言い切ってもいい。特に女の黄色い声は敵わない。
四六時中ついて回られるのも動きにくい。今名前呼んだじゃない、なんて言われても聞いていなかったんならしょうがないが振りほどくのも面倒だ。
問題はここ最近、うっとおしいのが一つ増えたということ。もう人じゃないから一つだ。
「このDIOが一緒に居てやるのだぞ、もっと有り難がれ」
「てめぇは二回死んだはずだろーが!」
「ここまできたら三回と思うだろう」
「…やれやれ」
ああまったく面倒だ。この吸血鬼俺に憑いているらしい。厄介な。普通じゃないということは理解していたがここまでとは。
この自称夜の帝王は日がな一日本を読んでいることもあれば、犬に吠えられてびびったりしている。犬が苦手とは新しい発見だとは思ったが。
「承太郎、それにしてもお前はつまらんやつだな」
「…何?」
他のやつに言われれば気にしないことでもこいつが言うとやけに気にかかる。わざわざ嫌味に言っているんなら毎日毎日よくも続くなと思うほどだ。
聞き流すようにつとめてはいるが、人の神経を逆なですることが得意らしく毎日無駄な時間を費やしている。無駄無駄言うやつのせいだから笑えない。
「時を止められるのだぞ?もっと愉快に使えばいいものを」
「どこでだ」
吸血の時、とか言い出したらぶっ飛ばしてやろうと思って拳を作る。そもそもお前幽霊だからそんな必要ないだろう、それともスタンド使いは死んでもスタンドが使えるのか?
もちろんそれは有り得ないだろう。返事をしないそいつに背を向けて、教科書と格闘することにする。50日の遅れは少々痛い。日数は休みがつぶれるがなんとかなるだろうと教師が言っていた。
「…横断歩道とか!」
どうだすごいだろうとばかりに胸を張る、半透明のDIOは反応を待ってふわふわと宙を浮いている。
「ショボいぞ」
元帝王が庶民になっていくのを生温い目で見送りながら、早く解放されたいと遠くを眺めた。

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DIOさまは死んでも上までなかなかいかなそう、承太郎につきまといそう…というイメージ。
でも幽霊なら横断歩道関係ないし、むしろ歩道を車で行けというDIOさまだから…ちょっとズレてる。