続・庶民化計画

 
どうやらうちにいる人間でDIOが見えるのは俺だけらしい。ちょくちょく遊びにくるようになったジジイすら気が付かない。
ただ、俺の部屋はなんだか良くないとは思うらしい。たまに部屋をのぞきに来ては首をかしげて、不思議そうな顔をする。
「承太郎、お前の部屋はちょっと変じゃな」
何がというわけじゃあないんだが、変だと繰り返してジジイはふらふらと出かけてしまった。
西日が当たるわけでもないのになんて台詞がジジイの口から飛び出した日には、風水までかじりだしたかと思わず驚いたものの俺の部屋が勝手にいじられることはない。
部屋の中央に陣取ったこたつの中には、DIOが寝ている。そんなに気持ちいいか、とたずねたいほどリラックスしている。
「ジョセフには見えないらしいな」
ごろり、と突然体を反転させてDIOが話しかけてくる。心臓に悪い。持っていたペンをくるりと手の中で遊ばせる。
「俺だけらしいな」
「それもこのDIOの愛だ」
当然であるかのように言う元帝王だが、こたつに肩までうずまりながらでは説得力も半減だ。そもそもそれはお前が関係していないと思う、が言うと絡んでくるので黙っておく。
今流行りの歌まで口ずさんでいる。お前、本当に100年も前の人間なのか。恐らくジジイかお袋が歌っているのを聞いて覚えたんだろう。
昼間はこいつがどこにいて、何をしているかはわからない。だからもしかしたら、街に繰り出しているという可能性も無きにしも非ず。
「おい承太郎、今このDIOのことを考えていただろう」
「何でそうなる…」
自分の魅力はよぉく知っているらしいこいつは、たまにこうしてからかってくる。からかうというよりは、きっかけを作って俺で遊びたいらしい。
幽霊に口説かれるってのも奇妙な話だが、男でも女でも見境がないっていうのは本人から聞かされている。
「勘違いするな」
冬休みに入るというのに、足りない日数のせいで年末ぎりぎりまでは学校に行かないといけない。課題もごっそりと出ているし。
「そんなこと何の役にもたたないというのになぁ」
可哀想に、と付け足してこたつの中で絡めてくる足をどうしてやろうか考えながらペンを持つ手に力をこめた。

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かまってもらいたがりDIOさま、かなりうっとおしいと思っている承太郎。
幽霊だからぶっとばせない、と思っている。