続々・庶民化計画
満月が近くなると、DIOはそわそわと落ち着かない。ただでさえ夜は元気がありあまっているのに、輪をかけてやかましい。
「承太郎、明日は満月だな」
「ああそうか、良かったな」
窓辺のカーテンを開けて外を眺めるDIOは鼻歌を歌いながらご機嫌な様子だ。眠るに眠れない。気が散る。でも体は睡眠を欲しがっている。
「今日もなかなかいい月だが」
被っていた布団をめくられる。夜くらいぐっすり寝て休みたいがそうもいかないらしい。
淡い光が部屋に差し込んでいる。どうやら飽きるまで付き合わないと眠れなそうだ。
ただ相槌を打つだけで満足することを理解してからは、さっさと話を打ち切りたいときにだけ返事をすることにしている。
今日はまさにそれだ。眠たくてたまらないのに。暖かい場所から抜けると肌寒く、半纏を羽織ってのそのそと窓辺に寄る。
「風情がない…」
「悪いが日本の冬には必須だ」
顔を歪めるDIOはさておき、外を眺める。赤い月だ。いつもとは全く違う、すこし不気味な印象を与える。
なんとなく窓を開ける。外の空気はやはり冷えていて、急に冷たい空気を吸ったせいで鼻がつんとした。
「鼻が赤くなったな」
「見んな」
手のひらで隠して、笑うDIOを遠ざける。薄く笑うと、その口からは尖った犬歯が覗いている。吸血鬼であることを再び思い出した。
強い風が入り込み、机の上に積んでいたプリントを吹き飛ばす。しまった、重しがなかった。そもそもあんまりにも突然で、予想もしていなかった。
部屋の至るところに散らばったそれを見て、DIOは楽しそうに笑った。それをひとにらみ、声を出して笑いはしないものの我慢出来ないのかにやにやと顔が笑っている。
「やれやれ…」
窓を閉めて、プリントを拾い順番に並べる。途中、指先にぴりと痛みが走った。ふと見ると、血がにじんで赤い線が出来ていた。
「承太郎、指が切れているぞ」
「ああ…今切ったんだ、大したことじゃ」
ない、と言い切る前にその指はDIOの口のなかにふくまれていた。生暖かい下の感触が指先に触れる。
「久しぶりの血はいいな」
「てめぇ!幽霊じゃねぇのかっ」
「すこしまえから実体になっていただろう、気付かなかったのかね?」
そういえば最近くっきり見えるような、今確かめたら影もあった。手はまだDIOに捕まれている。昨日も足触ってた、気がする。
「ジョースターの血は格別だ」
まるで愛しいものにさわるみたいに、ふわりと羽が触れるような口づけを甲に落とされる。
「承太郎、まんざらでもないようだが?」
「…調子に乗るんじゃねぇ、放り出すぞ」
まだ捕まれている手を振りほどいて、布団に戻る。吸血鬼という言葉がなぜか頭から離れなかった。
「承太郎、明日は満月だな」
「ああそうか、良かったな」
窓辺のカーテンを開けて外を眺めるDIOは鼻歌を歌いながらご機嫌な様子だ。眠るに眠れない。気が散る。でも体は睡眠を欲しがっている。
「今日もなかなかいい月だが」
被っていた布団をめくられる。夜くらいぐっすり寝て休みたいがそうもいかないらしい。
淡い光が部屋に差し込んでいる。どうやら飽きるまで付き合わないと眠れなそうだ。
ただ相槌を打つだけで満足することを理解してからは、さっさと話を打ち切りたいときにだけ返事をすることにしている。
今日はまさにそれだ。眠たくてたまらないのに。暖かい場所から抜けると肌寒く、半纏を羽織ってのそのそと窓辺に寄る。
「風情がない…」
「悪いが日本の冬には必須だ」
顔を歪めるDIOはさておき、外を眺める。赤い月だ。いつもとは全く違う、すこし不気味な印象を与える。
なんとなく窓を開ける。外の空気はやはり冷えていて、急に冷たい空気を吸ったせいで鼻がつんとした。
「鼻が赤くなったな」
「見んな」
手のひらで隠して、笑うDIOを遠ざける。薄く笑うと、その口からは尖った犬歯が覗いている。吸血鬼であることを再び思い出した。
強い風が入り込み、机の上に積んでいたプリントを吹き飛ばす。しまった、重しがなかった。そもそもあんまりにも突然で、予想もしていなかった。
部屋の至るところに散らばったそれを見て、DIOは楽しそうに笑った。それをひとにらみ、声を出して笑いはしないものの我慢出来ないのかにやにやと顔が笑っている。
「やれやれ…」
窓を閉めて、プリントを拾い順番に並べる。途中、指先にぴりと痛みが走った。ふと見ると、血がにじんで赤い線が出来ていた。
「承太郎、指が切れているぞ」
「ああ…今切ったんだ、大したことじゃ」
ない、と言い切る前にその指はDIOの口のなかにふくまれていた。生暖かい下の感触が指先に触れる。
「久しぶりの血はいいな」
「てめぇ!幽霊じゃねぇのかっ」
「すこしまえから実体になっていただろう、気付かなかったのかね?」
そういえば最近くっきり見えるような、今確かめたら影もあった。手はまだDIOに捕まれている。昨日も足触ってた、気がする。
「ジョースターの血は格別だ」
まるで愛しいものにさわるみたいに、ふわりと羽が触れるような口づけを甲に落とされる。
「承太郎、まんざらでもないようだが?」
「…調子に乗るんじゃねぇ、放り出すぞ」
まだ捕まれている手を振りほどいて、布団に戻る。吸血鬼という言葉がなぜか頭から離れなかった。
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DIO承ってあんまり見かけないよなぁと思いながら書いたらこんなんでました。
…承太郎のガードがゆるすぎる…!DIOさまは吸血鬼だからまぁ普通の幽霊とは違うんだな!と思っていただければ〜
だいぶファンタジーです。
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